Kitakyushu Multidisciplinary Study Group

Report Vol.10 / 2026.10.10

Vol.10
Report

第10回 開催レポート ─ 栄養剤まるわかり講座

第10回は「知って、味わって、活かそう!栄養剤まるわかり講座」と題し、栄養剤の基本を学び、26品を実際に飲み比べ、在宅の事例から使い方を考えました。当日の内容を要約してお届けします。

日時
2026年10月10日(土)14:00〜16:35
参加者
33名(20以上の事業所から)
所属
居宅介護支援事業所、介護老人保健施設、病院・診療所、歯科診療所、訪問看護、訪問介護、通所介護(デイサービス)、薬局、福祉用具、医師会、大学など
申込時の所属から分類しています
会場
サンキュードラッグ 門司港本店薬局 3階
内容
第1部 講義/第2部 試飲・試食/第3部 ゲストトーク・事例発表・質疑応答
講師
在宅訪問栄養相談を行う管理栄養士の皆さん、訪問歯科の歯科衛生士さん、食品メーカーの皆さん
ゲスト
落水洋介さん

01栄養剤には「医薬品」と「食品」がある

口から、または管を通して胃や腸から栄養をとる方法を「経腸栄養」といいます。そこで使う栄養剤には、医師が処方する医薬品と、お店で買える食品の2種類があります。

医薬品食品
主な目的病気や手術後の栄養管理食事で足りない栄養を補う
費用保険適用で自己負担が小さい全額自己負担
種類少ない多い(100種類以上)
入手先医療機関・薬局スーパー・ドラッグストア・通販

医薬品の栄養剤は、1980年代のエレンタールから2025年のイノソリッドまで、少しずつ進化してきました。最近の製品ほど、食物繊維や微量元素などが充実しています。

令和8年度の診療報酬改定のポイント

栄養を保つ目的の医薬品について、保険が使える場面が明確になりました。対象は、手術後の方、管で栄養をとっている方、食事で必要な栄養をとることが難しく医師が必要と判断した方です。医師は処方箋などに理由を書く必要があります。

対象はエンシュア・リキッド、エンシュア・H、エネーボ、ラコールNF配合経腸用液、イノラス配合経腸用液、ツインラインNF配合経腸用液の6製品です。「食事はとれているが少し足りない」という理由で飲んでいた方は処方されにくくなり、食品の栄養剤に切り替える例も出ています。

02食品の栄養補助食品は「続けられる」もので選ぶ

食品の補助食品は、味、形(ドリンク・ゼリー・おかず)、たんぱく質の量、価格で選び分けます。当日紹介された主な製品です。

製品(メーカー)特徴・こんな方に
アイソカル100(ネスレ)100mLで200kcal。甘い味からコーンスープ味まで。むせやすい方にはゼリータイプも
エンジョイクリミール/すっきりクリミール(森永乳業クリニコ)125mLで200kcal。「すっきり」は脂質ゼロで、乳製品が苦手な方やお腹がゆるくなりやすい方に
リハたいむゼリー(森永乳業クリニコ)100kcalでたんぱく質10g。リハビリ中や筋力をつけたい方に
ブイ・クレスCP10(ニュートリー)吸収しやすいコラーゲンペプチド入り。褥瘡(床ずれ)やけが、手術後の方に
カロリーメイトゼリー(大塚製薬)1日に必要なビタミンの約半分がとれる
エプリッチゼリー(フードケア)220gで360kcal。冷やすとプリン状に固まり、切り分けて食べられる。価格も手頃
栄養支援 茶碗蒸し(ホリカフーズ)甘くない出汁の味で6種類。甘いものが苦手な方に
メイバランスMiniカップ/ソフトJelly(明治)125mLで200kcal。スープ味もあり、たんぱく質を強化した「ミチタス」も

03病気に合わせた栄養食品もある

病気製品(メーカー)特徴
腎臓病リーナレンLP/MP(明治)エネルギーはしっかり、たんぱく質・リン・カリウムは控えめ。透析の前後で使い分け
肝臓病ヘパス(森永乳業クリニコ)BCAAを増やし、不足しがちな亜鉛を多く配合
糖尿病グルセルナ(アボット)、インスロー(明治)、ディムス(森永乳業クリニコ)糖質の量や吸収のスピードを抑え、食物繊維を配合

長い間ほとんど食べていない方に急に栄養を入れると、体のバランスが崩れて危険なことがあります(リフィーディング症候群)。少量から始めることが大切です。

04試飲・試食会の結果

4つの班に分かれて試飲・試食し、「美味しかった」「勧めたい」のシールで投票しました。1位はエプリッチゼリー、続いてカロリーメイトゼリーとブイ・クレスCP10でした。茶碗蒸しや、大塚食品の減塩レトルト「マイサイズ」のカレーも好評でした。

大塚食品の担当者さんからは、カロリーと塩分を控えたレトルト食品「マイサイズ」の紹介があり、新商品のカレーを試食させていただきました。電子レンジで温められ、常温で長く保存できるので、退院後の食事や災害時の備えにも使えます。新商品の「プラスサポートW」は1食250kcal・たんぱく質10g・食塩1gです。

05ゲストトーク:食べる側から見た栄養剤

ゲストの落水洋介さんが、栄養剤を「食べる側」の立場から話してくださいました。

  • 食事が十分にとれないので栄養剤に頼るしかないが、正直とてもまずい。それでも「食べなきゃダメ」と言われ、口にするしかないという葛藤がある。
  • 自分はまだ言葉で伝えられる。けれど、意思を伝えにくい高齢者や障害のある方は、まずいものを「食べなきゃダメ」と口に押し込まれていることがある。
  • 支援者が「美味しいものもある」という情報をたくさん知っていてくれるだけで、助かる人は実は多い。
  • 管理栄養士さんに毎月来てもらい、いろいろな味や種類を紹介してもらうことで、毎日の生活が明るくなった。困ったときは一人で抱え込まず、専門職を頼ってほしい。

「食べて」と勧めるばかりだった支援者側が、食べる側の気持ちに少し近づけた時間でした。

06事例:退院後の栄養管理

退院後、1日に必要な量の4分の1ほどしか食べられなくなった方の事例です。訪問した管理栄養士が、ご家族の調理の負担を増やさない工夫を重ねました。

  1. お湯を注いで混ぜるだけでゼリー状になるお粥と、エプリッチゼリーを紹介
  2. 酵素の入った粉(スベラカーゼ)で、ご飯をなめらかなゼリー状のお粥にする方法を紹介。まとめて作って冷凍もできる
  3. コーンスープにチーズを足す、牛乳や豆乳で溶くなど、量を変えずに栄養を増やす

約1か月半で、食べられる量は必要量の9割以上になり、体重も増えました。食べる量を増やすには、本人だけでなく、作るご家族が続けられる方法を一緒に探すことが大切だと分かる事例でした。

07事例:その「食欲低下」、お口が原因かも?

食欲が落ちたとき、胃腸など内臓の病気を疑う前に、口の中も確認してほしいという訪問歯科からのお話です。

  • 口腔カンジダ症:口の中が白い・赤い・ヒリヒリする。汚れと思ってこすると悪化するので、自己判断で取らない
  • 顎骨壊死:骨粗しょう症の薬を飲んでいる方が、歯周病や抜歯をきっかけに起こすことがある
  • ウイルス性の口内炎:たくさんできる口内炎に、手持ちのステロイドの塗り薬を使うと悪化することがある

口の中は「食べる前」「食べている時」「食べた後」に見るのがおすすめです。入れ歯が合っているか、むせていないか、食べ物が口に残っていないかを確認しましょう。食事量が急に減った、入れ歯を使わなくなったなどの変化があれば、歯科に相談してください。

08質疑応答から

栄養剤を飲んだ後にお酒を飲んでもいい?
メーカーとしては回答できないとのこと。栄養状態や肝臓、血糖の状態によるので、ご高齢の方は主治医に相談してください。
飲み込みが悪くなり、献立のレパートリーが少ない
まず言語聴覚士に飲み込みを評価してもらいましょう。普段の食事をミキサーにかけてゼリー状にすれば、香りの良いおいしい食事にできます。
管理栄養士に自宅へ来てもらうには?
要支援・要介護の認定を受けている方は、介護保険で管理栄養士の訪問を受けられます。主治医の指示が必要なので、ケアマネジャーに相談してください。

09参加者の声(アンケートから)

当日のアンケートでは、回答した15名全員が「満足」以上(うち「非常に満足」11名)でした。試飲会は「業務にすぐ役立つ」6名、「参考になった」9名。寄せられた感想の一部を紹介します(10月14日時点の回答。一部を抜粋・要約しています)。

「栄養補助食品が想像よりも美味しく、利用者にも勧めやすい。」

リハビリ専門職

「たくさんの種類があるので、管理栄養士さんに入ってもらうことで、その方に合わせた支援ができると改めて感じました。」

ケアマネジャー

「実際の味が確認できたこと、当事者に近い視点を含め、機能面だけでなく味や満足度の面も考える必要があると思いました。」

リハビリ専門職

「栄養剤が常に進化していること。状態にあった栄養剤が必要であること。」

ケアマネジャー

「しっかりした知識と商品の提示ができる管理栄養士さんと協力できる環境は素晴らしいと思いました。(事例:退院後の栄養管理)」

リハビリ専門職

「口内炎で一括りに考えていましたが、気づけばいいなというポイントを提示していただけたので、ご家族にも説明していきたいと思いました。(事例:お口と食欲低下)」

リハビリ専門職

製品の情報は当日の資料に基づきます。最新の情報は各メーカーにご確認ください。当日の資料は後日掲載します。

ご講演・ご協力いただいた皆さま、試飲品をご提供いただいた各メーカーの皆さま、ご参加の皆さま、ありがとうございました。

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